2012年6月4日

7/7 第6回日本カンボジア研究会、発表要旨(3)

ベトナム・メコンデルタのクメール居住地域における土地改革と地主層の解体

下條尚志(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

本研究では、キン(ベト)、クメール、華人の混住が著しいベトナム・メコンデルタのソクチャン省において、クメールの人口が全体の9割を占めるP村を取り上げる。P村ではかつて地主小作関係が顕著に存在していたが、サイゴン政権期(1955~1975)に土地の買い上げと小作農への土地分与政策が行われ、続く共産党政権期(1975~)には土地の強制接収と家族数に応じた土地の一律再分配が実施され、既存の地主層は解体されてきた。しかし近年農村の経済発展によって新興の地主層が新たに台頭しつつある。これらの歴史的過程を考察するとともに、かつて調査村で最大の農地を所有していた地主一族が、同村に存在するクメール仏教寺院に多大な寄進を行い続け、地主解体を経た現在でも、寺や村社会における最大の庇護者としての地位を保ち続けている理由を分析する。