2017年5月22日

6/24 Abstract 1

井上航
「親密さと遊びと竹―カンボジア北東部山地民村落の竹筒打奏・竹筒飯から」

 発表者は2011年度から2015年度にかけて、カンボジア北東部ラタナキリ州のクルン人の一村落にて、博士論文のためのフィールドワークを行った。民族音楽学という専門領域になるが、住み込み、参与観察、民族誌という研究方法で臨んでいる。本発表は、陸稲の収穫にともなう祭祀で大勢の人が畑に集まったときに見られる竹筒打奏と竹筒飯をとりあげる。竹筒打奏は、ほとんど加工しない竹筒(節間70cm程度)の両端で手による打音を出し、竹筒に共鳴させて楽しむものである。竹筒飯は、節間にもち米を入れて炊き、竹皮をむいて円筒形を保っている飯をバナナのようにほおばるものである(クメールの郷土食にも似たものがある)。いずれも、発表者の調査地では上記の祭祀の「風物詩」的なものだが、常に見られるわけではなく、その場の気分次第というところがある。
 多くの竹にふれる竹筒飯づくりの作業があった場では竹筒打奏もよく見られることに注目し、場の出来事のなかで両者をつなぐものは何かを考える。竹と人、人と人の関係にみる親密さ、ノンヴァーバルな感性的経験などを論点として、それらの理解や記述の問題も展望したい。